1 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

気がつくと、私は学校の校舎にいた。

長く、人1人の気配もない廊下に、1人立っている。

明かりがついているはずなのに薄暗く、空気の流れすら感じない。

私は、わけもなく、その終わりの見えない廊下を、進み始める。
2 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

数歩進んだところで、私はなんとなく、不快感を覚えた。

お腹の方から何か、圧迫されるような……

……

…………

………………トイレに行きたい。


内側からせり上がってくる緊張感の正体は、おそらく、いや、確実に、

「尿意」だ。
3 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

私はトイレを求めて、無限に続いていると思われる廊下を、ひたすら歩く。

けれどもさっぱりトイレはなくて、増幅する腹部の不快感とシンクロするように、1歩1歩の速さを早めていく。

廊下の脇には、教室、授業で書かれた絵、教室、啓発ポスター、教室、別の廊下の入口……

トイレは全く、現れない。
4 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

ガタンッ

「!」

突然、後ろから、何かの気配がした。

きっとそれは、真っ暗で、巨大て、あるはずなのに何もない、でもとてつもなく恐ろしい、何かだ。

それは今、無限の廊下の向こうから、こっちにやって来ている。

逃げなきゃ。

絶対にそれに追いつかれてはならないような気がして、私は走った。

6 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

どれくらいの時間が経ったかわからない。

「それ」の気配は消えていた。

再び、誰もいない校舎に取り残された。

ほっと胸を撫で下ろして……とはいかず、代わって、先程までの腹部の不快感が強力になってやってきた。


教室を駆け出し、再びトイレを探して流浪する。
7 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

歩いても、走っても、目的地は見えない。

ぐるぐると渦巻く焦燥感と、一刻も早く出してしまいたいという欲求に心を支配され、この場に膝をついて力を抜いてしまいたくなる。

けれども、長い廊下に一抹の希望を抱いて、歩き続ける。
8 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

そして、見つけた。

左側の、ドアのない部屋に飛び込む。

ピンク色のタイルの床に、個室が並んでいるのが見えて、少し安堵する。

トイレは酷く煤けていて、しかもすべて和式であったが、もうそんなことを気にしている余裕もない。


両脚を擦り合わせながら、一番手前の個室に駆け込む。
9 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

私は白いそれを跨ぎ、慌ててズボンとパンツを下ろす。それとほぼ同時に……

しょおおおおおおおお

音を立てて、私の緊張感の根源が、流れ落ちる。

極限の緊張からの突然の解放は、絶大な快感となって、身体の全てを支配する。

私は、しばしその快感に身を委ね、放心していた。
10 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

快感のあまり、身体を支える脚が震える。

脚の間から流れる水のアーチは、とどまるところを知らない。

不意に、下半身が温かいものに包まれる感覚を覚え、困惑する。


その時、私の意識は、どこか遠くの方に吸い込まれた。
11 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

……

…………

………………


眼を開くと、見知った木製の天井がじんわりと見えてくる。

私は、いつの間に眠って……いや……

少しずつ、記憶が戻ってくる。

私は、昨日から、千咲の家に泊まっている。

私は床の上に敷いた布団の上に眠っていて、左を向くと、ベッドの上で千咲が眠っていた。
12 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

そこで、私は気づいてしまう。

下半身全体が、温かく湿っていることに。
13 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

嫌な予感がして、布団をめくろうとする。

むわっ……と、温まった空気とともに、それ特有の臭いが鼻をついた。

私はそれ以上、布団を捲るのをやめた。


…………やってしまった。
14 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

実は、昨日の夜からそういう感じはしていた。

夜中に起きた時、トイレに行こうとした。

が、行けなかった。

トイレまでの道程が、なんとなく前に見た、薄暗い夢に似ていて。

1人では絶対に行きたくないと感じた。

だから、千咲を起こすことにした。
15 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

「千咲、千咲、起きて」

私は悪いと思いながらも、寝ている千咲の身体を揺さぶった。

「千咲、ねえ」

千咲の方はだいぶ熟睡していたようで、喫茶店だとかパソコンだとか呟いて、また寝息を立て始めた。
16 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

一度は諦めた。

諦めて、1人でトイレに行こうとした。

暗い、何も見えない、鏡がある、こわい。

やっぱりだめだった。だめだったよ千咲。ねえ。
17 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

「千咲ーーーー」

また千咲を揺さぶる。

千咲は息を吸い込み、僅かに目を開ける。

「千咲、トイレについてきて」

千咲は数秒ほどこっちを見てから、ぷいっと向こうを向いてしまった。

「白羽先輩……」

だめだ、寝ぼけている。

千咲を起こすのはどうやら無理みたいだ。

さて、どうしようか。
18 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

『千咲が起きるまで待つか』

『1人でトイレに行くか』


私は、トイレに行くのを諦めて、布団に入った。
19 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

——というのが、昨夜の出来事。

カーテンからは朝日が漏れだし、時計は6時を指している。

私は絶望のどん底にいるというのに、千咲はまだ寝息を立てて寝ている。
20 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

こうなったのは千咲のせいなのだ。

布団からできるだけ身体を動かさず、寝ている千咲の顔をのぞき込む。

むっと頬を膨らませてみたが、千咲の表情は変わらない。

ついでに千咲のおでこに指を近づけて……

ペチッ

「ぅひ……!?」

デコピンした。
21 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

何をされても起きないと思っていた千咲は、むくりと身体を起こした。

それにびっくりして、慌てて湿った布団に戻る。

「朝ですか、黒奈さんおはようございます」

寝起き特有のいつもより低めの声で、千咲が伸びをする。

「おはよう」
22 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

「黒奈さん……勘違いだったら申し訳ないんですけど、寝ている時何かしませんでしたか?」

「してない」

「そうですか、夢でしたか」

「そう、夢」

千咲が起き上がってくる。

私は起き上がらない。

いや、起き上がれない。
23 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

「???黒奈さん、起きて朝ごはん食べますよ」

「…………」

「黒奈さん?…………ん?」

くんくん、と、千咲が鼻を動かす。

まずい。


「…………」

「……黒奈さん、布団めくってもらってもいいですか?」
24 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

「……やだ」

「なんでですか」

「それも千咲の夢」

「一応確認したいことがあるんです」

「だめ」

「…………」


千咲が、ばっと私の布団を引っぺがした。
25 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「……黒奈さん?これは?」

「…………」

「黒奈さん?」

「……千咲のせいだもん」

「えっ」
27 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

「はぁ……しょうがないですね、布団乾かしてそれも洗っちゃいましょう、脱いでください。あとシャワー浴びて来てください」

「……うん」


浴室の扉を閉じて、びしょびしょのズボンとパンツを脱ぐ。

人の家で衣類を全て脱ぐという体験がなかったので、なんだか急に恥ずかしくなった。
28 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

千咲は着替えも準備してくれたし、シャワーを浴びて出てくると、もう布団が干してあった。


「千咲」

「なんですか?」

「ごめん」

「どうして謝るんですか……?」

「なんかいろいろ」
29 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

「ところで、千咲」

「はい」

「どうしてそんなに手馴れてるの?」

「…………!!!それは!」

「秘密ですっ」

「…………?」
30 以下、VIPがお送りします 2018/11/02(金)
ID:CYVqn0cJ2

おわりです

オチが思いつきませんでした